ウトヤ島事件、その映像化作品

Posted: July 20, 2021
🔖Cinema

長回しの功罪?

 France2のニュースで、今週、ノルウェーで2011年に起きた無差別テロ事件から10年を迎えることを知りました。ウトヤ島の乱射事件です。個人的に、当時はちょうど田舎の父親が亡くなった頃合いで、認知症の母親を東京に連れてくるなど、とても忙しく立ち回っていたせいか、この事件にのことは、多分ニュースなどでは見ていたと思うのですが、記憶からすっぽり抜けていました。

 そんなこともあって、この事件を題材にした映画『ウトヤ島、7月22日』(エリック・ポッペ監督、2018)をAmazon Primeで観てみました。余談ながら、事件からフィクションとしての映像表現までのスパンは、昔よりもずいぶん短くなっているような気がしますね。

 あまり予備知識がない状態で観始めたのですが、すぐにこれが長回しでずっとつないでいく趣意だということがわかりました。ここでは臨場感というも、主人公の視点に寄り添うという感じの表現のように思われます。一人称というわけではないですが、主人公の連続的な反応を追体験できるような構成ですね。臨場感を主に狙った、ちょっと無理矢理感がないわけでもない『1917 命をかけた伝令』などよりも、よほど実効性が感じられる演出だと個人的には思われました。

 ただ、長回しに象徴されるようにひたすら主人公から見た現場を描き続けるせいか、事件はきわめて限定的にしか見えてきません。凄惨な現場なども控えめにしか描かれていませんし、銃声が執拗に鳴り響くばかりで、不気味さだけが持続し続けます。事件そのものへのなんんらかの理解には、やはりどこか俯瞰的な視点が必要になるのでしょう。その意味では、同じく無差別テロを描きながら、PTSDとか事件後の被害者の生き方などにも目配せをしていたヴィルヌーヴ監督作品の『静かなる叫び』(2009)が、いっそう鮮烈に記憶に残るようにも思われます。

 

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