タルド『経済心理学』を読む - 2

Posted: June 23, 2021
🔖文献探査シリーズ

序章第1章 2節

 序論の冒頭で示された、社会の靱帯としての「模倣の法則」ですが、これはかなり広範に適用できる原理ではないか、というのが、第2節の話になります。まず、模倣の社会的な広がり(波及)は、自然誌における動植物の拡散にも比される現象だと述べています。種が拡大する力学が、模倣に比されるというわけです。

 拡大の力学は、物理世界、天文世界、化学世界、そして生物界に幅広く観られる現象とされ、その延長線上に人間の社会的な世界も位置づける、と見なされています。拡大はある意味創造的な動きですが、それが反復に依存しているという議論は、タルドの慧眼ですね。模倣とは一義的には反復にほかなりません。

 一方で拡大には変化・適応の側面もあり、豊穣な調和が別の新たな調和へと変貌していく過程でもある、とされています。とすると、(1)では適応はどのように作用するのか、(2)変化はいかにして伝播していくのかが問われるべき問題となる、とタルドは指摘します。

 (1)については諸学問分野で検討されてきているとタルドは言いますが、総じてそれは不十分だとされています。たとえば自然誌の分野では、ダーウインなどの自然淘汰説をもってしてもうまく説明がなされていないとして、これを批判しています。自然淘汰説は、競争にばかり重きを置き、交雑やハイブリッド(混種)性をあまり重視していないのが過ちである、というのですね。

 「生物は競争ばかりしているのではなく、むしろ交雑・交差を軸にすえて考えたほうがよいのではないか」という見方や主張は、今でもときおり唱えられていたりします。タルドもまた、変種の生成や刷新の拡大を重視していることから、こうした批判が展開するのも納得いきます。いずれにしても、そうした変化や刷新の力学については、生物学のみならず、社会学においても十分に検討されていない、とタルドは述べます。

 (2)の伝播の現象については、時代的な推移などを検討しなくてはなりません。これも諸学が検討を加えてきた問題だとしていますが、同じく不十分であるというのが、タルドの立場です。今度は逆に、あまりに類似する事象同士ばかりを眼にするために、それが障壁となって、変化の伝播に十分な検証が加えられていない、とされます。

 こうして、タルドは、社会の問題を中心に、この2つの問いにアプローチしていくことになります。

(続く)

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