『ハッピーアワー』
先の『ドライブ・マイ・カー』に続いて、同じ濱口竜介監督の『ハッピーアワー』(2015年)を観てみました。同じくwowowで放映されていたものです。こちらは5時間を超える長尺です。でも意外にもすんなり観られました。四人の女性たち、あるいは四組の家庭を描く群像劇で、それぞれが抱える問題が次第に明らかになっていく感じがスリリングで、つい見入ってしまいます。
長尺になっているのは、劇中にワークショップや朗読会があって、それらをフルに収録しているからでもあるのですが、それぞれの打ち上げの席でのやりとりが、人間関係の微妙なほころびを際立たせる働きをします。なかなか面白い舞台設定です。
四人の女性はそれぞれに個性的で、笑ったり怒ったりしながらぶつかりあっていきます。一方でそれぞれの夫など、登場する男性たちはいずれも無表情で、笑うこともありません。感情がないかのような存在です。当然、彼女らと彼らとのあいだでは、感情的な交流は希薄にならざるをえません。こうして作品は、ある種のディスコミュニケーション、あるいは言葉による意思疎通とノンバーバルとの狭間をめぐって、いわば堂々巡りしていきます。このあたり、『ドライブ・マイ・カー』にも連なるテーマですね。
こうしたテーマですから、一筋縄にはいきません。作品が長尺になっていくのも、ある意味で必然なのかもしれません。