『アメリカ紀行』
千葉雅也『アメリカ紀行』を読んでみました。なかなか読ませる文章で、著者の歩みにぐいぐい引き寄せられます。この著者の作品は、哲学論考の『動きすぎてはいけない』とか、小説の『デッドライン』とか読んでいますが、今回のエッセイ的なものが一番好きかもしれません。軽妙かつ洒脱といいますか、現代思想の研究者としてのバックグラウンドが、文章の端々からさりげなくほの見え、それが著者の感性とぶつかりあって、独特な雰囲気を醸している感じです。
内容も、アメリカという風土の独特な様相に、ある意味翻弄される著者の心情が語られ、さながら「差異」から始まる哲学的考察という風情です。