📅  2022-10-01

グラフィックノベル

🔖  Mangas

映画的なクオリティ、そして詩へ


 このところ、個人的にバンドデシネもしくはグラフィックノベルを目にする機会が増えています。アメリカンコミックのような体裁の、大人向け長編のマンガ作品のことです。1冊で完結するようなもの、大型本を基本とするものが主流で(必ずしもそうでない場合も少なからずありますが)、テーマも作風もどこか昔のミニシアター系の映画のような雰囲気をかもし、作家性が感じられます。

 たとえばフランスものの邦訳として、人文系博士課程在籍者の日常を描く『博論日記』(ティファンヌ・リヴィエール、中條千晴訳、花伝社、2020)は、評判通りなかなか良かったですね。

https://amzn.to/3y6j32K

 研究者の卵が通過しなくてはならない大学の制度的な圧迫と、そこから生じる疲弊・焦燥・屈託の数々を、日常の心理描写などを通じて描いていきます。学問への熱意や中身が直接的に描かれるわけではなく、しかも年代的に飛び飛びでエピソードが語られていくので、その意味ではちょっとのぞき見的・皮相的な話になってはいるのですが、それでもある種の現実が反映された、ブラックユーモアとして秀逸です。

 韓国の作家による『大邱(テグ)の夜、ソウルの夜』(ソンアラム、吉良佳奈江訳、ころから、2022)は、男社会が強く残る韓国で、苦渋を味わいながら社会との折り合いをつけようと必死でもがく女性二人を主人公に据えた秀作でした。

https://amzn.to/3LXkYMw

 映画のような描写やコマ割りが実に利いていて、話に引き込まれます。著者と等身大の主人公たち、その周りの、いかにもいそうな感じの脇役たち……。これもまた、どこか風刺的に社会を描き出しているように思えますね。

 これらの作品は、いわば散文的なスタイルのグラフィックノベルなわけですが、もっと詩に近いものもあるようです。また、グラフィックノベルとして書かれたものではないにせよ、結果としてそれに近い、詩的・哲学的な本もありますね。たとえば大人の絵本シリーズと題された『四角形の歴史』(赤瀬川源平、ちくま文庫、2022)などは、そういうものに分類してよいように思えます。人が人為的なフレームを掲げるのは、どこから生じたのかをめぐる、グラフィックなエッセイ=ノベルといってよいでしょう。

https://amzn.to/3SLKerh

タグ

)