📅  2022-10-25

絶版本

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流通から退く本たち


 このところいくつかの記事などで、『絶版本』(柏書房、2022)が注目されていると聞きました。で、早速取り寄せてみました。著名な読書人たちが、絶版本を取り上げて語るというエッセイ集です。もっと考現学っぽいものを期待していたのですが、ちょっと違いましたね。

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 絶版本って、要は流通から完全に退いた本のことをいうと思うのですが(大雑把な定義です)、考えてみると、あらゆる本はいつか絶版になる運命を避けられません。生物がいつか必ず死ぬのと同様に、本もいつか必然的に流通から退き、死蔵され、忘れられていくのでしょう。時になにかのきっかけで、復活することもあるのでしょうけれど、長期的展望としてはついペシミズムを感じてしまいます。

 書物が貴重品だったころとは違い、本が気軽なものになってしまった現代においては、復活(再刊に限らず、たとえば翻訳ならテキストを一新しての再流通なども含めて)は、起こりにくいかもしれません。とすると、復活して古典として輝く、なんて機会も少なくなってしまうのかも。

 復活を促すような力動、あるいは古い時代のものが放つ一種のアウラのようなものが、人を駆り立て、古典と呼ばれる集成の成立を促してきたのでしょうけれど、もしそうした力動が弱っているとするなら、今後は古典化するものも少なくなってしまうのでしょうか。悩ましいところです。

 古典化の経緯に関して、主に西欧の古代・中世などを扱った研究を、これまで個人的にいくつか読んだことがありますが、やはり個別エピソードを貫く、俯瞰的というか、歴史縦断的な研究とかが、もっと増えてほしい、と当時も今も強く思う次第です。回り回って、そういう研究は、将来的な新たな古典の成立にも、影響しないとは限らないからです。

 

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