学術書の生き残り戦略?
年末の慌ただしい時期ですが、『わたしの学術書——博士論文書籍化をめぐって』(春風社編集部編、春風社、2022)という本に目を通してみました。学術書を手がける出版社が、これまでに学術書として出した本について、それぞれの著者に語らせるという趣向です。なるほど、これはちょっと変わった趣向のカタログですね。全体的に人類学系の本が多いようです。
個人的にも、著者や訳者のあとがきとか好きなんですけれど(そういう人は多いですよね)、時間を経てからの「続・あとがき」集みたいな感じにもなっています。その意味で、これは読者サービス志向というか、ちょっとしたエンターテインメント志向をも感じさせます。で、近頃反省も含めて(というのは、人文系の翻訳書を少し前まで手がけたりしていたからです)よく思うのですけれど、やっぱり学術書といえど、単にお堅い感じだけではいけない気がします。読者へのとっかかりのようなもの、あるいはナイフを手に握るときの柄の側を、ちゃんと出してほしいかな、と。そのあたり、学術書の生き残り戦略の一端にもなるんじゃないでしょうかね。
それは学問的な真摯さを損なわない、微妙なバランスの上でのことなのですが、そういったさじ加減というのはやっぱり難しいのかもしれません。『学術書の編集者』(橘宗吾、慶應義塾大学出版会、2016)などを見ると、現場の編集者もそのあたりで奮闘していそうなことがわかります。
老眼になってくると、電子書籍のほうが読みやすい、なんてこともあります。黒地に白の文字のダークモードとか、結構読みやすいんですよね。紙の本はなくなりはしなくとも、やはり電子版も出してほしいし、場合によっては、リアルダークモードというか、暗色に白や黄色で文字を印刷したものとか、普通にあっていいんじゃないかと思いますね(昔、国書刊行会や工作舎あたりで、それっぽいものを出していたように思います)。