📅  2023-02-08

ストーリー・オブ・フィルム

🔖  Cinema🔖  History

近年の諸作品をトラバース


 wowowオンデマンドで、『ストーリー・オブ・フィルム——111の映画旅行』(マーク・カズンズ監督作品、2021)を観てみました。おお〜、これは見事なフィルム・ドキュメンタリーですね。

 主に取り上げているのは2010年代以降の新しい作品たち。技術の進展や時代の変化に応じて、映画の表現がどのような変容を遂げてきたかを、いくつかのテーマ別に考察する、というエッセイ的な作品です。昔ながらの手法の何を継承し、何を刷新しているのかを、古い作品を引用しつつ描きだしていきます。

 個人的に面白かったのは、たとえば枠(フレーム)をめぐる考察。従来の映画は必ずフレームを伴っているわけですが、それを取り払った(?)VR映像作品として、台湾の監督ツァイ・ミンリャンの『蘭若寺(らんにゃじ)の住人』という2017年の作品が挙げられています。未見なので、そのうちぜひ観たいですね。ゴダールの『さらば、愛の言葉よ』が、両眼による視差への挑戦をなしているという話も、実演まじりで興味深いものでした。最近の映画がいかに映像表現の刷新・拡張をなしているかが、よくわかります。

 映画がつねに何らかの対象物を追っていく「追跡装置」だという話もあります。その部分でもなんらかの拡張が今後なされていくのでしょうか。あと、『スパイダーマン:スパイダーバース』が「すすぎと脱水の映画」だという指摘は、思わず笑ってしまいました。全体的に、映画への愛に満ちあふれた珠玉の2時間45分です。

タグ

)