📅  2023-02-20

幸徳秋水の帝国論

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まさに「怪物」な帝国主義


 おなじみ光文社古典新訳文庫から、幸徳秋水の『二十世紀の怪物 帝国主義』(山田博雄訳、2015)を読んでみました。軽妙で読みやすい現代語訳です。でも中身はずっしりと思い……。なんというか、為政者が追求する国体なるものが、100年ほど前からまったく変わっておらず、結局同じままに同じ事を繰り返すだけなのかと思うと、ため息が出ます。

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 愛国心の偽善、軍国主義の欺瞞、そして帝国主義の罠……。今も世界各地に息づいている、あるいは少なくとも兆しとして日本でもうごめいている、不穏で不吉な黒い動き。そんなものを賛美・支持する気には当然なりません。幸徳秋水の共産主義や無政府主義に共鳴せずとも、この帝国主義論は私たちの等身大の視線から出る軍備拡張への批判として、まさに準拠枠そのものであることを認めないわけにはいきません。ロシアのウクライナ侵攻開始からまもなく1年の今、改めて強くそのことを感じます。

 フレーズを引用しておきます。

だからモリエル氏はいうのである。「帝国主義は、国を大きくするが、国民を小さくしてしまう」と。(p.127)
国民はもはや小さい。それなのに、どうして国家が大きくなれるというのか。大きいようにみえるが、それははかなく消える泡にすぎない。空中楼閣にすぎない。砂上の家にすぎない。(同)

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